2018年4月17日 (火)

  鶯はケキョケキョとのみ朝の道

このところ妻とよく映画を観にいく。ありがたいもので60歳を過ぎるとひとり1000円で観れる。次はどの映画にしようかと話しながら二人で出かける楽しみがある。シネコンの会員カードまで作った。策略にハマったようでもあるが、まあそれもよし。
一番最近観たのが「ペンタゴン・ペーパーズ」。主演メリル・ストリープ&トム・ハンクス、監督スティーヴン・スピルバーグ。1970年代ニクソン政権下のアメリカ。全く成算のない戦争と知りながらベトナムにのめり込んで行った歴代政権の実態を、内部告発者がもたらした極秘文書で暴露したワシントン・ポスト(スクープしたのはNYタイムズ)の話。
メッセージは明確だ。批判的なメディアの報道を「フェイク・ニュース」と決めつけ、独善的にことを進めるいまの権力への、ハリウッド流レッド・カード。
ところ変わって日本もあれこれ騒がしい。否定→恫喝→(状況悪化で)同義反復→開き直り→トカゲの尻尾切り。ほとんど、見飽きた光景。
最近、書き留めた駄句のみ。


  しみじみと妻とふたりゐて花まつり

  いそいそと妻は孫の入園式

  石楠花や頬染めてゐたひとに似て

  いつはりの多き世にせよ青若葉

  鶯はケキョケキョとのみ朝の道

  秘めごとや射干の茂みの繁きこと


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2018年3月31日 (土)

花ふゞき西行も観た月のぼる

桜は一気に花を開き、来週には葉桜だろうという勢い。
桜だけでなく、梨やカリンやジューンベリーとか……ありとあらゆるものが命を燃え上がらせる、ここ数週間だ。
花見もこの週末まで。花を惜しむ句のみ。

  花ふゞき西行も観た月のぼる
  やまざくら根は幾代の土を抱く

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2018年3月13日 (火)

この齢になりてもさやぐ木の芽どき

冷え込む日があり、春の嵐があり、一足づつ春がやってくる。
雪国育ちなので、小さい頃はとりわけ春の訪れが嬉しかった。
雪の間からのぞいた黒土に咲いたオオイヌノフグリ。水の増え始めた用水路に萌え出したセリ。ヨモギやフキノトウにノビル・・・
東京暮らしが長くなり、その辺の季節の劇的な変化に少し鈍感になったのかもしれない。歳のせいでもあるのだろうか?
爆発するばかりの春の嬉しさは遠くなっても、やはり春は心落ち着かない。


  他を責むる顔鏡にゐ戻り寒

  沈丁花そ知らぬ顔の犬過ぐる

  逢はぬまゝ重ねし歳や沈丁花

  気がつけば柳もあをし運河沿ひ

  この齢になりてもさやぐ木の芽どき

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2018年2月21日 (水)

まんさくが開きなほるよに咲いてゐる

寒い冬だ。東京でも数十年ぶりという大雪が降り、暦の上では春になっても一進一退の寒さが続いている。
それでも水仙や福寿草が咲き、早咲きのものから梅花が開き出し、椿も。
季節は律儀に回っている。
近所を散歩していたらマンサクが黄色い花をつけていた。赤い花のものもあるようだ。
雪国の山野で他に先駆けて「まず咲く」から、こういう名前になったと聞いたことがある。
よじけて小さくて地味で、それでいて「どうよ!」と言わんばかりにぬけぬけとしているところが好きだ。
今年に入ってからの駄句、わずかだが・・・

  雪晴れの空の蒼さや梅にほふ

  早咲きの梅ふくらみてほの紅し

  鴨の群寒げに寄りて濠静か

  霜ばしら子供のやうに踏んでみる

  大寒や山盛りにして南瓜喰ふ

  梅微かに匂ふほどのぬくさ哉

  まんさくが開きなほるよに咲いてゐる

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シジュウカラ Eastern Great Tit

2018年1月 2日 (火)

和げてこと語りたき年の朝

タイトルは本年の年賀状に載せた句。詞書には
「疾風怒濤の昭和から見りゃ凪の海を迷走したような平成の三十年。五月蠅なす尖った言の葉さぎわう末は?」
と書いた。
しかし平成だって9.11、3.11をはじめ大変なことは多々あった。戦乱やテロや自然災害や・・・それでもこの国が戦もせずに来たことをありがたく思う。
晩秋から年末まで、書き留めたわずかばかりの句。


  秋闌けてトラムペットの音すなり

  木枯らしや鴉一羽空に墜つ

  入れ歯にて噛むにかまれぬ海鼠かな

  朝の椀湯気盛大に大根汁

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シジュウカラ Eastern Great Tit

2017年10月26日 (木)

ホトゝギス咲きて二人目の孫生る

もうすぐ10月も終わる。
あゝ、本当に今年も終わり近くなったなと思う。
天候不順なこの10月は、色々なことが重なった。
まずは二人目の孫が生まれ、ジイジも本格的になったこと。
そして孫誕生の翌日に訃報が届いた二十歳の姪の若すぎる死。
ひとり娘を失った義弟夫妻にかける言葉もなかった。
あれやこれやで、わずかな句のみ。


  ホトゝギス咲きて二人目の孫生る

  鴫(シギ)ひと群れ鳴きて秋の深まりぬ

  とる人のなき柿雨に打たれをり

  孫去りてとたんに広き秋の居間

  秋晴れや六十二歳の誕生日

(二十歳で逝った姪に)

  翔ぶ雁の翼と往けや二十華(ふたそはな)

  秋茜群れゐる空に旅立ちぬ

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2017年9月16日 (土)

彼岸花律儀に咲ける線路端

夏らしい猛烈な暑さをあまり経験することなく、台風一つで秋がやってきた。なんだか、ありがたいような不完全燃焼のようなひと夏。そして、何度かミサイルが日本列島上空を飛び、また台風がやってくるらしい。
日本でも世界でもあちこちで水害や土砂崩れが多いようだ。気候がおかしいせいか、花の終わったはずのシモツケがまた花をつけたりしている。
理不尽なこと、不安なこと、腹立たしいこと、悲しいこと。そういうあれやこれやがあっても、人の何気ない言葉や心配りに、慰められたり、力づけられている。
駄句のみ……

  ひと雨で青松虫の九月明く

  しみじみと渋さ懐かし青林檎

  つゝましき食卓なれど秋刀魚哉

  彼岸花律儀に咲ける線路端

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2017年8月22日 (火)

赤とんぼ高校球児の頭上にも

ぼんやりと過ごしている間に、季節は立秋を過ぎて、処暑も来ようかという時期になった。
暑くなければ雨が降ったりで、休みの日、何年かぶりに家でゴロゴロと高校野球を見たりしていた。
カメラが甲子園球場を写した画面を時折トンボの影が横切っていく。
もう数十年も前に夏の甲子園を見に行った時も、球児たちの熱戦から目を移すと、前をスイーっとトンボが飛んで行ったことを思い出した。

7月末からのわずかばかりの句。


  夏土用あくびの並ぶ朝電車

  図書館のしゞまに交じる蝉しぐれ

  蝉しぐれかはたれ刻を過ぎてなを

  カナカナの止みてゐる間の長さ哉

  赤とんぼ高校球児の頭上にも

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2017年7月22日 (土)

燕ツイと水をたゝきて池静か

言っても仕方ないと思いつつも……暑い。
昼はもちろんだが、夜も寝苦しい。
エアコンをつけているとノドをやられてしまうので、極力窓を開けて風を通すようにしているが、風がないと万策尽きる。
熱中症は室内にいてもなるという。お互いさま、無理をせずにご自愛を……


燕ツイと水をたゝきて池静か

店閉じた食堂わきの槿(むくげ)かな

通り雨過ぎて蝉の鳴き始む

水撒きやずぶ濡れなりに息つきぬ

ー伊豆に一泊旅行してー

蝉の声海にしみ入る網代宿

大島も小島も霞み朝の凪

ひもの干す先の軒にもつばくらめ

ツバメ Barn swallow

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2017年7月 5日 (水)

七夕の竿に親子の雀哉

東京はたまに晴れ間があっても梅雨空が続いている。
九州や中国地方では台風や前線の影響で大雨という。
東京都議会議員選挙があり、自民党は案の定大敗したが世の中の気分は梅雨空と同様、さっぱり晴れない。
目を外に向けても、あちこちでテロがあり、世界を恫喝するミサイルが飛び、それにまた恫喝が応じる。暗くて殺伐としたニュースばかり目につく。
いやな時代だ……が、今文庫本で読んでいる江戸時代の武士の日記も、酒の上の喧嘩や怨恨からの殺傷沙汰とその始末(磔獄門から斬首、切腹、遠島、追放……)、大火災や放火事件、洪水などの天災と不作、幕閣や藩の人事、色恋のゴシップ……今の週刊誌ネタとあまり変わらない。
武士が本業の戦さをしなくなって綱紀は緩みっぱなし。殿様も家来も台所は火の車で閉塞感いっぱい。そんな時代でも日記の主は、仕事やお付き合いをそつなくこなし、体面を気にしながらも人形浄瑠璃や芝居に興じ、釣りや投網にはいそいそと出かけ、時どきの感興を漢詩に詠む……。
まあ、いつの世も処世はかくあるべきなのだろうな。


  むきつけの言葉の雨や合歓くたす

  大蝦蟇(がま)ののそりと動く宵の闇

  七夕の飾り揺れたり路地の風

  七夕の竿に親子の雀哉

  梅雨の夕 コルトレーンをバラードで

  妻刻む茗荷の音や夕餉どき

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